日本市場で成果が出ない
カスタマーサクセスの型を輸入したら、更新の面談が進捗報告会になった
海外のカスタマーサクセス(顧客の成果を支援して契約の継続と拡大につなげる仕組み)の型をそのまま日本に持ち込むと、四半期ごとの定例が進捗報告会に変わります。ヘルススコアは緑、利用率も出ている。それでも更新の3か月前に、聞いていない条件が相手から出てきます。
原因は担当者の力量でも、日本の顧客が消極的だからでもありません。型が前提にしている「顧客側で成果を社内に説明する人」が、相手の会社にいないからです。
相手の決裁層に、その言葉自体が届いていない
バーチャレクス・コンサルティングの「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」2025年版(2025年3月3日公表、調査期間2025年2月21日〜26日、インターネット調査、全国の20〜65歳の有職者64,138人が対象。2019年から毎年実施の定点調査で7回目。カスタマーサクセスの支援サービスを売る事業者の自社調査である点は割り引いて読む必要があります)では、「カスタマーサクセス」という言葉を聞いたことがある人は21.9%、意味を理解している人は全体の2.8%でした。
役職別では、企業のトップ層の78.6%が「聞いたことがない」と回答しています。理解しているトップ層は4.6%です。最も理解度が高かったのは執行役員・本部長・事業部長層で12.3%でした。
母数が64,138人あって、2019年からほぼ横ばいです。一時的な浸透待ちではありません。
こちらが四半期ごとに説明している概念を、更新を決める人が知らない。この状態では、定例が進捗報告会として受け取られるのは自然です。相手にとって、それ以外の読み方がありません。
評価されているのはLTVではない
同じ調査の第9弾(2025年3月25日公表)で、カスタマーサクセスに取り組んでいない企業の経営・管理層101人に「どのような成果が得られれば取り組む価値があると考えるか」を聞いています。重視されたのは利益拡大74.3%、売上拡大70.3%で、LTVの最大化は相対的に低い水準にとどまりました。
この設問は「自社がカスタマーサクセスに取り組むか」を聞いたもので、買い手として何を見て更新するかを聞いたものではありません。n=101と小さくもあります。それでも、日本の経営層が継続収益をどの言葉で評価しているかの手掛かりにはなります。
海外の型は、LTVと利用定着を共通言語にして組み立てられています。その2語が、相手の決裁層には届いていません。
引き継ぎの空欄は、更新の3か月前に効いてくる
HiCustomerの「カスタマーサクセス白書2023」(調査2023年4月18日〜30日、有効回答203。カスタマーサクセス向けツールを売る事業者の自社調査で、n=203と小さく、回答は自己申告です)では、38.5%が「営業からの引き継ぎが十分に行われていない」と答えました。引き継ぎが不十分な企業では63.3%が解約率2%以上で、引き継ぎが十分な企業の約1.7倍です。
これは相関であって因果ではありません。解約率が低い企業ほど組織が整っていて引き継ぎも回っている、という逆向きの説明が成り立ちます。それでも、最優先KPIに寄与した施策の1位が2年連続で「オンボーディングプロセスの見直し」25.1%だった点と合わせると、着手する場所としての優先度は高いと判断できます。
Consilegyでは、次の2つが空欄のまま引き継ぎを通さない運用にしています。成功条件と契約範囲です。営業の口頭説明に依存させません。
直すのは指標ではなく、渡す文書
輸入した型に足すのは4項目です。ヘルススコアの設計より先に置いてください。
- 成功条件:相手の言葉で。何がどうなれば導入は成功か
- 顧客側の運用担当と、その上長:名前で。役職名だけでは足りない
- 営業が口頭で約束したこと
- 契約範囲
そのうえで、四半期の定例の出力を議事録から「相手が社内で回せる1枚」に変えてください。書く順序は、更新しなかった場合に何が戻るか、今期の実績を相手の数字で、次期に増える範囲、の3つです。カスタマーサクセスという言葉を一度も聞いたことがない人が読んで意味が通る文章にします。
定着を利用率やログイン数で見ていると、この文書は作られません。指標の置き方はCRMの定着をログイン率で測ると、必ず合格点が出るで扱っています。
海外のカスタマーサクセスの型は、顧客側に成果を社内で説明できる担当がいることを前提にしている。日本ではその担当を作るところまでが支援の範囲に入る。
受注から継続・拡大までを一続きの構造として設計する考え方は、レベニューアーキテクチャとはにまとめています。
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四半期の定例で渡す1枚は、実質的に相手の稟議のたたき台です。書く順序は新規契約の稟議と同じ設計になるため、稟議のたたき台を営業が書いて渡すと、止まっていた承認が動くの手順がそのまま使えます。
同じ悩みの記事は「日本市場で成果が出ない」にまとめています。