日本市場で成果が出ない

日本法人の設立前に測るのは、需要ではなく承認の通り方

日本法人の設立前に測るのは、需要ではなく承認の通り方

日本法人を作るかどうかを決める前に、たいてい市場検証が走ります。市場規模、競合、価格の受容度。半年ほどかけて「市場はある」という結論が出る。

法人を作り、カントリーマネージャーを採り、4四半期後にパイプラインが動いていない。

検証が甘かったわけではありません。検証した問いが、参入の成否を決めている問いではなかった。

需要の有無は、法人を作らなくても分かる唯一の項目

市場規模も、競合の顔ぶれも、日本企業がいくら払っているかも、机の上で調べられます。外部環境の追い風も見えています。ジェトロの対日投資報告2025では、新規法人設立型のグリーンフィールド投資が前年比15.4%増の4.8兆円で過去最大でした。

つまり、需要側の材料はすでに十分にある。法人を作ってはじめて分かることの中に、需要は入っていません。

では法人を作ってはじめて分かることは何か。買いたいと言った担当者が、自分の会社の中でその話を通せるかどうかです。ここだけが、実際に日本の案件を走らせないと見えない。

日本の承認経路は、製品への評価とは別の場所で止まる

IDEATECHと北川裕康氏の共同調査(2026年4月16日公表、調査期間2026年3月23〜26日、n=307。年間契約額または一括導入費300万円以上の商材の導入・乗り換えに2名以上で関与した人に限った調査PRのため、桁感として読んでください)では、承認段階が2段階の企業が60.9%、2段階以上が8割を超えます。3段階以上も約2割。検討期間は3〜8か月が63.6%で、6か月以上が約4割でした。

この経路を通るとき、担当者の手元に必ず降ってくる質問があります。請求書は円建てで出せるか。契約書は日本語か、準拠法はどこか。障害時の窓口は日本時間に開いているか。取引先の与信と反社チェックはどう通すか。

どれも製品の評価とは関係がありません。そして、法人があれば解決するものと、法人があっても解決しないものが混ざっています。その内訳を知らないまま法人を作ると、法人の設計が勘で決まります。

営業に会う前後を一続きで見る考え方は、レベニューアーキテクチャとはにまとめています。

法人がない状態で商談を5件走らせると、止まる位置が一覧になる

法人がなくても日本には売れます。海外法人との直接契約、代理店経由、円建ての請求代行。どれも実務としては動く。ここでの目的は売上ではないので、条件が多少悪くてもかまいません。

実名の見込み客を5件から10件、最後まで進めます。受注しなくていい。記録するのは2つだけです。止まった位置と、止めた人の役職。

分布が出ると、法人に持たせるべきものが決まります。全件が法務で止まったなら、先に要るのは営業の増員ではなく、日本語の契約ひな形と準拠法の妥協ラインです。全件が経理で止まったなら、必要なのは円建て請求と支払サイトへの対応で、これは法人よりも決済の座組みの話になる。全件が「使ってみたいが前例がない」で止まったなら、法人を作っても止まります。

採らなかった案が2つあります。1つは現地の調査会社に市場調査を発注する案。もう1つは日本語のランディングページを作って反応を見る案。どちらも需要を測る手段で、承認の通り方を測りません。半年かけて、すでに分かっていることの精度を上げてしまう。

「規模が合わない」で外される問題は、法人を作っても消えない

同じ調査で、候補から外した理由の上位は機能不足39.1%、企業規模が合わない34.5%、似た企業の導入事例がない26.4%でした(複数回答)。選ばれた理由の1位は「似た規模の事例があった」44.3%です(この設問のみn=298)。

法人を作っても、日本の事例はゼロのままです。だから検証期間の目的は、売上ではなく、あとで名前を出せる顧客を1社か2社つくることに置きます。

ここを先に決めておかないと、最初の数件を「いちばん買ってくれそうな相手」で選びます。選ぶ基準は、買ってくれるかどうかではなく、次の商談で名前を出せるかどうかです。業種、規模、使い方が、狙う市場の真ん中にいること。

日本法人の設立前に確かめるのは需要ではありません。日本の買い手が社内で通せるかどうかです。法人がない状態で商談を走らせ、止まった位置と止めた人の役職を記録してください。その分布が、法人に何を持たせるかを決めます。

今週やるなら、日本から来た問い合わせか、既存の海外顧客の日本拠点を5件リストにする。売り込む前に、そのうち1件で「もし買うとしたら、誰の承認がいくつ必要ですか」と聞いてください。返ってくる段数が、必要な立ち上げ期間の下限です。

関連する記事

止まった位置を記録するという話は、入口をパートナーにするか直販にするかの判断にもそのまま効きます。パートナー経由で始めた案件は、失注理由が自社に残らないに、記録が自社に残る条件を書きました。

同じ悩みの記事は「日本市場で成果が出ない」にまとめています。