商談が進まない・受注が読めない
稟議のたたき台を営業が書いて渡すと、止まっていた承認が動く
「いい話でしたね」で終わった商談が、そのまま稟議に上がらずに消えます。担当者は乗り気でした。資料も送りました。それでも動きません。
原因は説得力の不足ではありません。その担当者が、自分の会社の稟議書を書けないからです。
営業側がたたき台を書いて渡してください。承認は、熱意ではなく文書で動きます。
相手は、あなたの商品の稟議を書いた経験がない
稟議書は、書き慣れた人が書いても重い作業です。弁護士ドットコムのプロフェッショナルテック総研が2024年9月25日から10月31日にクラウドサイン利用者312名へ実施した調査では、稟議の仕組みに課題が「ある・多少ある」と答えた人が65.2%でした。具体的な課題の1位は「承認完了までに関わる人が多すぎる」41.0%、2位が「稟議書作成前の相談や根回しに時間がかかる」35.9%、3位が「稟議書の作成が必要となる対象範囲が広すぎる」31.6%です。
この調査の回答者は電子契約サービスの利用者で、社内手続きのデジタル化が進んだ企業に偏っています。実態はこの数字より重いと考えるのが妥当です。
つまり、あなたの担当者は、自分の通常業務に加えて、初めて扱う商材の投資判断を、5人以上に説明できる文書に落とす作業を求められています。締切もありません。後回しになるのは合理的です。
資料を送ることと、たたき台を渡すことは別の作業
提案書とサービス資料を送っただけでは、担当者の作業は1ミリも減りません。翻訳の手間が増えるだけです。
たたき台とは、相手の稟議書の枠に貼り付けられる粒度の文章を指します。ConsilegyのCRM設計では、この工程を「稟議支援」という独立したワークフローとして持ち、次の5項目を商談に記録します。
- 稟議支援状況:たたき台を渡したか、渡していないか
- 送付資料:ROI資料、比較表、導入事例のどれを渡したか
- ROI仮説:相手の言葉で書いた費用対効果の根拠
- 顧客内締切:相手の社内で、いつまでに決める必要があるか
- 推進者支援度:担当者が、上に上げる側に回っているか
このうち最も抜けるのが「顧客内締切」です。こちらの四半期末は記録されているのに、相手の予算サイクルと稟議の締切日は誰も聞いていません。
たたき台に入れる4つの要素
書く順序は、相手の社内で反対が出る順です。
- 導入しない場合に何が続くか:現状維持のコストを、相手の数字で書きます。導入効果より先にこれを置きます
- 比較した他社と、外した理由:相見積もりの体裁を、相手の代わりに整えます。ここが無いと差し戻されます
- 想定される反対と、その回答:情報システム部門のセキュリティ、法務の契約条項、経理の支払条件。ProFutureとマクロミルが2026年2月3日から4日にBtoBマーケティング業務従事者103名へ実施した調査では、外部から接触しにくい「聖域部門」の上位は経営企画室29.1%、情報システム部門27.2%、人事・総務部門23.3%でした。営業が直接会えない部門ほど、文書だけが先に届きます
- 稼働までの日数と、自社側の作業量:誰が何時間使うのかを書きます。ここが空白だと、決裁者は最悪値を想定します
同じ調査では、決裁権を持つキーマンに「十分にアプローチできている」と答えた企業は9.7%でした。回答者103名の自社メディアを持つ事業者による調査であり、母数は小さい点に注意が必要です。ただし、決裁者に直接会えない前提で商談を設計する必要があることは、この数字が無くても現場の実感と一致します。
稟議が止まるのは相手の熱意の問題ではなく、稟議書に書く材料が相手の手元に無いからです。
今週、3か月以上動いていない商談を3件開いてください。そのうち、こちらが稟議のたたき台を渡した案件が何件あるかを数えます。ゼロなら、止まっているのは相手の社内ではなく、こちらの受け渡しの設計です。
承認の進み方を収益の構造としてどこで測るかは、レベニューアーキテクチャとはにまとめています。
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