導入したのに使われない

CRMの定着をログイン率で測ると、必ず合格点が出る

CRMの定着をログイン率で測ると、必ず合格点が出る

CRMを入れて数か月後、定着の報告にログイン率が使われることがあります。90%を超えていれば「定着しています」と報告されます。

同じ週の営業会議では、進行中の案件の状況を担当者に口頭で聞いています。画面の記録は先週のまま止まっています。

ログイン率が高いことと、定着していることは別の事象です。ログイン率は画面を開いた回数を数えているだけで、その画面から何が決まったかを数えていません。

「使っているか」を聞くと、ほぼ全員が使っていると答える

使用率で測る限り、この種の指標はほぼ必ず合格点になります。

キーウォーカーの調査(調査期間2025年10月8〜10日、公表2025年11月11日、PRIZMAによるインターネット調査、n=1,034、SFA・CRM・BIツールを導入済みの企業で当該ツールを使用している営業部門の現場担当者と管理職。同社はBIツールの導入支援を提供する事業者で、自社調査である点は割り引いて読んでください)では、ダッシュボードの用途を聞いた設問で「ほとんど使用していない」と答えたのは管理職2.2%、現場担当者1.9%でした。使用の有無で測れば、98%が使っていることになります。

同じ設問で選ばれた用途を並べると、その98%の中身が見えます(複数回答のため合計は100%を超えます)。

  • 営業会議の数値確認:管理職58.2% / 現場担当者48.6%
  • 自身や部下の営業活動の振り返り:46.6% / 43.6%
  • 業績の進捗確認:41.0% / 39.5%
  • 上司・役員への報告資料作成:35.9% / 26.0%
  • 次のアクションの検討:15.4% / 20.7%

会議で数字を確認する用途が最も多く、次の行動を決める用途は管理職で15.4%です。画面は開かれています。ただし開かれ方の大半は、確認と報告であって判断ではありません。

ログイン率も使用率も、この差を一切表示しません。判断に使われている状態と、会議前に数字を写している状態が、同じ1回として計上されるためです。

開いた回数ではなく、決まった判断の数と記録の鮮度で測る

定着指標を3つに置き換えます。いずれも既に取れている情報だけで作れます。

1. その画面だけで作れた議題の本数。週次営業会議の議題のうち、CRMの画面だけを見て組み立てられたものが何本あったかを数えます。担当者に聞かないと作れない議題は、記録が判断に使われていないという意味です。

2. 記録の鮮度。最終更新から7日を超えた進行中商談の本数と比率を出します。ログイン率は毎日1回開けば満点になりますが、記録が2週間前のままでも満点になります。同じキーウォーカーの調査では、営業活動後の入力タイミングは「毎回すぐに入力している」が40.2%、「1日の終わりにまとめて」32.2%、「週に数回まとめて」11.2%、「月に数回まとめて」3.9%、「入力自体ができていない・入力漏れが多い」が12.5%でした。すぐに入力していない側が約6割です。鮮度を測らない限り、この6割は指標に現れません。

3. 記録の外で進んだ案件の数。会議で口頭報告されたのに、画面に該当する更新が無かった案件を数えます。ここが多い月は、記録が意思決定の外側に置かれています。

入力はしているが使ってはいない層が存在することは、以前から数字に出ています。ハンモックの調査(2021年9月30日〜10月2日実施、n=305、従業員300名以上でSFAを導入したことがある経営者・役員が対象。SFAを提供するベンダーの自社調査であり、調査時点から年数が経っている点は割り引いてください)では、SFAの利用状況で「データを入力するのみ」と答えた企業が7.5%ありました。ログイン率では、この7.5%は使いこなしている企業と区別できません。

効いたのは、増えると誰かが困る指標を1つ置いたこと

3つのうち最も効いたのは、2番目の記録の鮮度です。

ログイン率は、増えても誰も困りません。報告する側が安心するだけです。一方「最終更新から7日を超えた進行中商談の比率」は、増えると自分の案件が会議で扱えなくなるので、担当者本人が困ります。定着指標を、管理側が安心する数字から、現場が困る数字に置き換えた時点で、報告のための会議が減りました。

指標を置き換えること自体が、入力の目的を宣言する行為でもあります。先のキーウォーカーの調査では、入力の意欲が高まる要素の1位は「入力の目的やデータの使い道が明確」で54.8%、2位は「自分の成果や成長が可視化される」で40.1%、3位は「入力内容がKPIと連動している」で36.5%でした。ログイン率を追う組織は、入力の使い道を「見張るため」と宣言していることになります。

定着は、画面を開いた回数ではなく、その画面から決まった判断の数と、記録の鮮度で測る。

直近4回の営業会議の議題を並べ、CRMの画面だけで作れたものが何本あったかを数えてみてください。1本も無いなら、ログイン率が何%であっても、その組織のCRMはまだ定着していません。

記録を持つ目的は、活動を残すことではなく、誰がいつ何を判断するかを組織に埋め込むことです。この考え方の全体像はレベニューアーキテクチャとはにまとめています。

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