導入したのに使われない
CRMの推進担当を、ツールに一番詳しい人にしてはいけない
導入プロジェクトの終盤で「運用の推進担当は誰にしますか」と聞くと、たいてい一番詳しい人の名前が返ってきます。設定を覚え、ベンダーとのやり取りを担当していた人です。
その選び方をした案件ほど、半年後に止まっています。
止まる理由は本人の能力ではありません。推進に必要なのは知識ではなく権限であり、その2つは同じ人に付いていないことのほうが多いからです。
専任は置けない前提から始める
「専任のCRM担当を置きましょう」という提案は、ほとんどの会社で実行されません。人がいないからです。
IPA(情報処理推進機構)の『DX白書2023』では、DXを推進する人材が「充足している」と答えた企業は日本で10.9%、米国で73.4%でした(日米企業アンケートは2022年6〜7月実施、有効回答は日本543社・米国386社)。公的機関の調査で、日米が同一設計で比較されている点が貴重です。
HubSpot Japanの「日本の営業に関する意識・実態調査2024」(2024年2月公表、マクロミルに委託した同社の自社調査、売り手n=1,545、従業員51〜5,000名)でも、データ活用の困りごとの内訳1位は「データを活用できる人材がいない・不足している」で28.6%でした。CRMを売る事業者の自社調査ですが、設計と母数は開示されています。
つまり、現実の問いは「専任を置くか」ではありません。既にいる誰かに兼務させるとき、誰に振るかです。
知識ではなく、3つの権限で選ぶ
推進担当に必要なものを、次の3問で見ます。3つとも「はい」でないなら、その人は推進役ではなく作業役です。
- 定例会議の議題を決められるか。 定着が起きるのは、研修をやった週ではなく、会議の資料の作り方が変わった週です。議題を変えられない人は、入力する理由を作れません。
- 入力していない人の名前を、会議の場で挙げても角が立たない立場か。 立場が並列だと、この一言が言えません。言えないまま3か月経つと、入力しないことが既定になります。
- 項目を減らす決裁ができるか。 項目を足す要望は誰でも通せます。減らすのは、要望を出した部署に「使われていないので消します」と言う行為であり、権限が要ります。
所属別に、どこで詰まるか
情報システム部門に置くと、設定は最も速く進みます。しかし議題を決める立場にないため、2番目と3番目で止まります。項目の削除依頼が「現場の要望なので残します」で戻ってくる状態は、この配置で起きます。
現場のエース営業に置くと、説得力は最も高くなります。しかし同僚の入力漏れを指摘する立場になく、本人の数字が落ちた瞬間に推進が後回しになります。一番詳しい人がここに当てはまることが多く、これが冒頭の失敗の中身です。
営業企画・経営企画に置くと、3問すべてに近づきます。この職種は既に会議資料を作っているため、議題の入力元を変える権限が業務に含まれています。バーチャレクス・コンサルティングの「RevOps実態調査(国内)2023年版」(2023年3月24〜26日実施、n=9,798、全国の20歳以上の経営者・役員・会社勤務者。RevOps支援を手がける事業者の自社調査)でも、国内では経営企画やマーケティング部門で取り組む割合のほうが、専門部署を設けて取り組む割合より高いという結果が出ています。日本で実際に回っている置き方は、専任の新設ではなく企画部門の兼務です。
役員に置くと号令はかかりますが、週次の実務が伴いません。役員は3番目の決裁者として使い、推進担当には置かないでください。
兼務で置くなら、始める前に3つ決める
兼務は「今の仕事に足す」と読まれた時点で失敗します。開始前に次を文書で決めてください。
- 外す業務を名指しで決める。 「調整して」では外れません。何を誰に移すかまで書きます。
- 月1回、その人が経営会議で数字を報告する枠を作る。 報告義務があると、入力されていない事実がその人の問題になります。
- 項目の追加と削除の決裁権を、その人に置く。 これが無い推進担当は、要望の受付窓口になります。
推進担当は、ツールに一番詳しい人ではなく、営業会議の資料を作っている人に置く。
詳しさは引き継げますが、権限は引き継げません。詳しくない人を置いた場合、覚えるのに2週間かかるだけです。権限の無い人を置いた場合、半年かけて何も変わりません。
誰が何をいつ判断するかを組織に埋め込む設計の全体像は、レベニューアーキテクチャとはにまとめています。
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推進担当を決めた次は、その人に最初に何をさせるかが問題になります。効くのは新しい運用を足すことではなく、既にある定例の議題を変えることです。手順はマニュアルを作るより、週次会議の議題を変えるほうが効いたで扱っています。
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