導入したのに使われない
マニュアルを作るより、週次会議の議題を変えるほうが効いた
CRMが使われていないと分かったとき、最初に作られるのはたいていマニュアルです。
配っても入力率は変わりません。読まれないからではなく、読んで入力しても、入力した本人にとって翌週の仕事が何も変わらないからです。
手を入れる場所は資料ではありません。既にある週次の営業会議です。
「この案件、どこまで進んでる?」を口頭で聞いている限り、入力は要らない
月曜の会議で進捗を口頭で確認しているなら、その組織のCRMは、見なくても仕事が回る状態になっています。画面を開いても先週と同じ内容が並んでいるので、結局その場で本人に聞く。ツールがあるのに人に聞いている状態が定着すると、入力は「頼まれたときにやる作業」に落ちます。
ツールを入れた後に機能が使われなくなること自体は、珍しい話ではありません。ハンモックの調査(2021年9月30日〜10月2日実施、n=305、SFAを導入したことがある従業員300名以上の経営者・役員が対象。同社はSFAを提供するベンダーで、調査時点から年数が経っている点は割り引いて読んでください)では、「導入し全ての機能を使いこなしている」は27.6%、「全てではないが使っている」が49.8%、「データを入力するのみ」が7.5%、「導入したが現在何も利用していない」が5.9%でした。
導入した後に何が起きるかを分ける変数は、機能の多さではありません。入力した情報が、どこで使われるかです。
新しい運用を足さず、既にある定例の議題を作り直す
ここで新しい会議体や新しい入力ルールを足すと、ほぼ確実に続きません。日本の組織には、それを回し続ける人の余力がないためです。
IPAの『DX白書2023』(2023年2月9日公表、日米企業アンケート調査は2022年6〜7月実施、有効回答は日本543社・米国386社)では、DXを推進する人材が「充足している」と回答した企業は日本10.9%に対し米国73.4%でした。「大幅に不足している」は日本49.6%(2021年度調査の30.6%から増加)に対し、米国は3.3%です。公的機関が日米を同一設計で聞いた調査であり、日本側に専任の推進役を置ける前提がないことが数字で出ています。
そこで足し算をやめ、既にある3つの場の入力元だけを変えました。
- ダッシュボードを見る時間を、個人の心がけではなく定例の枠として固定する
- 週次営業会議の議題を、口頭報告ではなくCRMの数字から組み立てる。画面に無い案件は議題に載せない
- 1on1の目的を進捗確認から、「なぜ動けなかったか」をプロセス側から問い直す場に変える
3つとも、既に存在する時間です。増えるのは工数ではなく、その時間の入力元だけです。
効いたのは、入力しないと本人が困る構造
議題をCRMの数字からしか作れない形にすると、入力していない案件は会議で扱われません。困るのは管理側ではなく、案件を進めたい本人です。この順序になった時点で、マニュアルは要らなくなります。
レビューを仕組みとして設計することの効果は、海外の調査にも表れています。McKinseyの調査(2021年4月公表、B2B企業2,500社を対象としたグローバル調査。日本のデータではありません)では、成長率の高い企業は、年1回ではなく月次でアカウントの優先順位を見直す割合が、そうでない企業より50%高いと報告されています。差は営業担当者の質ではなく、見直しが仕組みとして予定に入っているかどうかです。
定着させたいなら、マニュアルを増やすのではなく、既にある定例の議題を、その画面からしか作れない形に変える。
次の営業会議で、議題を1つだけCRMの画面から作ってみてください。作れない議題があるなら、それは入力が足りないのではなく、その項目が誰の判断にも使われていないという意味です。
ツールは情報を整理するためではなく、誰がいつ何を判断するかを組織に埋め込むために持ちます。この考え方の全体像はレベニューアーキテクチャとはにまとめています。
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