日本市場で成果が出ない

外資SaaSの日本参入で最初に詰まったのは、翻訳でも価格でもなく採用だった

外資SaaSの日本参入で最初に詰まったのは、翻訳でも価格でもなく採用だった

本社は「日本語のサイトと現地価格を用意すれば売れる」と考えます。ところが立ち上げの半年で最初に止まるのは、たいてい採用です。

営業とマーケの現地担当が採れず、用意したローカライズを動かす人がいない。

海外SaaSの日本チームで、繰り返し起きている場面です。

翻訳と価格は、入口の課題でしかない

日本参入でまず議論されるのは、日本語対応と価格設定です。どちらも必要ですが、そこは入口にすぎません。

翻訳したサイトを見て問い合わせた見込み客に、日本語で提案し、稟議を一緒に通し、導入後を支える人がいなければ、案件は前に進みません。

その「動かす人」が、日本で最も採りにくい職種です。

JETROの2024年度外資系企業ビジネス実態調査(2024年10〜11月実施、国内の外資系企業7,301社を対象に有効回答1,427社、有効回答率19.5%)によれば、外資系企業が確保に最も苦しむ職種は営業・マーケティング人材で、最多の約6割。次いでIT・技術人材が約4割で、他の職種を大きく上回りました。

公的機関の調査で母数と回答率が開示されており、この論点で最も堅い一次データです。

なぜ営業・マーケ人材が最初のボトルネックになるのか

日本市場が伸びていること自体は、追い風です。

同調査では増収企業が48.7%(前年度比6.6ポイント減)、事業計画が想定通り進行した企業が約6割。

JETROの対日投資報告2025では、新規法人設立型のグリーンフィールド投資が前年比15.4%増の4.8兆円で過去最大でした。

参入する企業は増えているのに、動かす人材の供給が追いつかない。だから採用が真っ先に詰まります。

理由は、日本の営業・マーケが担う仕事の重さにあります。

日本のB2B購買では、担当者が「良い」と思っても、そこから複数部門の合意形成と多段階の稟議が始まります。

本社が想定する「良い製品なら売れる」型の営業ではなく、社内合意を一緒に設計する営業が要ります。

この動きを本社の型のまま英語で回すことはできません。日本の商習慣を分かった現地人材に依存します。

そして、その人材こそが最も採れない。ここに構造的な詰まりがあります。

参入設計で先にやること

採用を、参入計画の後工程ではなく最初の工程に置いてください。

日本語化と価格の議論と同時に、営業1人目とマーケ1人目をいつまでに、どの給与水準で、どの経路で採るかを決めます。

ここが埋まらない限り、ローカライズは在庫のまま動きません。

採用が間に合わない期間は、外部で補います。

JETROの同調査では、日本国内の企業や大学と協業している外資系企業ほど増収比率が高いという結果が出ています。

現地の営業・マーケ機能を、社員採用が固まるまで業務委託や協業で立ち上げる判断は、データの上でも整合します。

翻訳と価格を磨く前に、それを日本市場で動かす人の当てを付ける。参入の順序は、そこから組み直せます。

日本市場の構造を、獲得から維持・拡大まで一続きのレベニューアーキテクチャとして設計すると、どの工程に人を先に置くべきかが見えてきます。

よくあるつまずき

  • 採用を最後に回す。 製品ローカライズと価格を決めてから採用に着手すると、動かす人がいない期間が長引きます。採用は最初の工程です
  • 本社の職務定義をそのまま使う。 英語圏の営業像で募集をかけると、稟議と合意形成を担える人材とかみ合いません。日本の購買構造に合わせて職務を書き直します
  • 「日本語ができる人」で妥協する。 語学ではなく、日本のB2B商習慣で受注まで運べるかが要件です。ここを外すと、採用しても案件が進みません

海外SaaSの日本参入で最初に効くのは、翻訳でも価格でもありません。現地の営業・マーケ人材を採れるかどうかで、立ち上がりの速度が決まります。

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