リードが商談につながらない
開封率は改善する指標ではなく、判断から外す指標です
開封率が30%から38%に上がりました、という報告を受けても、そこから決められることはほとんどありません。
その1回が、受信者がメールを開いたときに記録されたのか、メールが届いた時点で記録されたのかを、送り手側から区別できないからです。
件名を直す前に、この数字をレポートから外してください。
開封の1回は、メールが届いた時点で記録されていることがあります
開封率の仕組みは単純です。本文に小さな画像を1枚埋め込み、その画像が読み込まれた回数を数える。画像の読み込み=開封、という前提で成り立っています。
この前提を、Appleが2021年に外しました。Mailユーザガイド(macOS 27版、Appleの公式サポート文書)は、「メールアクティビティを保護」を有効にした状態について、IPアドレスが送信者から隠され、リモートコンテンツはメッセージを表示したときではなく受信したときにバックグラウンドで非公開にダウンロードされる、と説明しています。
埋め込んだ画像は、受信者が何もしなくても読み込まれます。開封は、受信の別名になりました。
この設定はiOS 15(2021年9月公開)以降、Mailを最初に開いたときに本人が選びます。誰が選んだかは、送り手側からは分かりません。自社のリストの何割がこの状態にあるかを調べる方法も、ありません。
数字が動いた理由を、件名の良し悪しから切り分けられません
開封率が先月より上がったとき、理由の候補は最低3つあります。件名が効いた。リストの構成が変わって、登録直後の人の比率が上がった。読み手側の環境が変わった。
3つ目は送り手からまったく見えません。機種変更でも、受信者の会社がメールゲートウェイの設定を変えただけでも動きます。日本の企業では、受信側で外部画像の読み込みを既定で止めている環境も珍しくない。この場合は逆に、実際に読まれても開封は記録されません。同じ数字が、環境によって過大にも過小にも出ます。
ここで区別しておきたいことが1つあります。A/Bテストのようにランダムに2群へ振り分けて件名を比べるなら、受信環境の偏りは両群で相殺されます。件名Aと件名Bのどちらが開かれやすいかは、今でも比べられる。
比べられないのは、先月と今月、日本と本国、施策の前と後という、群が揃っていない比較です。そして会議に出てくるのは、ほぼ後者です。
Googleは開封率を追っておらず、代わりに0.10%という別の線を引いています
Gmailの送信者ガイドライン(Googleの公式サポート文書)には「開封率」という見出しがあり、3行しか書かれていません。Googleは開封率を追跡していない。第三者が報告する開封率の正確性をGoogleは検証できない。開封率が低いことは、配信到達性やスパム判定の問題を示すとは限らない。
一方で、Googleが数字で線を引いている指標があります。迷惑メール報告率です。Postmaster Toolsで0.10%未満を保ち、0.30%に達しないこと。2024年2月1日以降、Gmailの個人アカウント宛に1日5,000通を超えて送る事業者は、この条件を満たすことが求められています。
受け取る側のプラットフォームが見ているのは、開かれたかどうかではなく、嫌がられたかどうかです。そして嫌がられたかどうかは、送り手からも同じ数字で見えます。開封率とは逆に。
置き換えるのは別の率ではなく、1通ごとに決めた「次の一歩」の到達人数です
弊社の運用診断では、配信の見直し方を4段階で聞いています。ほとんど見直していない。開封率・クリック率だけ確認している。商談や受注につながっているかまで確認している。データをもとに継続的に改善している。
2段階目で止まっている会社が最も多い。ここは、見ていない状態より良く見えて、実際には測れていない数字を眺めて改善したつもりになっている状態です。
では何を置くか。「クリック率にしましょう」と答えると、同じ問題が一段ずれるだけです。クリックも、セキュリティ製品がリンクを先読みして記録されることがあります。
指標の差し替えではなく、メール1通ごとに「受信者に取ってほしい次の一歩」を1つだけ決めて、そこに到達した人数を実数で見てください。導入前のチェックリストを配る回なら、チェックリストを開いた人数。事例を送る回なら、事例ページから問い合わせフォームに来た人数。日程調整を促す回なら、日程を選んだ人数。
率ではなく実数にする理由は2つあります。母数が小さいと率は簡単に跳ねること。そして営業と話すときに必要になるのが、率ではなく件数であることです。
この決め方には副作用があります。次の一歩を1つに決められないメールは、送る理由が定まっていないメールだと分かる。月次のメルマガが毎回これに引っかかるなら、直すべきは件名ではなく配信の設計です。
開封率は、受信者が開いたかどうかを言えない数字になっています。メールを直す起点は率ではなく、1通ごとに決めた「次の一歩」に到達した人数に置いてください。
よくあるつまずき
- 開封率を「参考値」としてレポートに残す。 会議に出た数字は必ず判断に使われます。参考値という扱いが持つのは1回目だけで、2回目からは「先月より下がった」が議題になる。外すと決めたなら、表から消してください
- 代わりに配信到達率を置く。 到達率は送信側の衛生状態を表す数字で、受信者の関心とは別物です。SPF・DKIM・DMARCの設定と迷惑メール報告率は、成果指標ではなく運用の前提条件として管理してください
- どうせ測れないなら、と計測ごと止める。 開封を判断に使わないことと、計測を切ることは別です。クリック先のURLの出し分けとフォーム到達の記録は、次の一歩を数えるために引き続き必要になります
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「次の一歩に到達した人数」を営業への引き渡し基準に使うと、渡す理由を一行で説明できるようになります。その線の引き方は、営業に渡すリードは、点数ではなく「行動」で決めるに書いています。
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