リードが商談につながらない

施策を止める判断は、中止ではなく「更新しない」で下す

施策を止める判断は、中止ではなく「更新しない」で下す

「この施策、そろそろ止めるべきだと思うんですが」と相談されるとき、たいてい数字はもう揃っています。商談になっていない。費用は出ている。担当者も分かっている。

それでも止まりません。翌年度の予算表には、同じ行が同じ金額で載っています。

止まらない理由を「判断が甘い」で片づけると、次の年も同じ会話をすることになります。止める数字が足りないのではなく、止め方が「中止」しか用意されていないことが原因です。

費用対効果が合わないと分かっている施策ほど、翌年の予算表に残る

ProFuture(マーケトランク編集部)とマクロミルが2026年3月4日に公表した調査があります(調査は2026年2月3〜4日、BtoBマーケティング業務に従事する会社員103名へのインターネット調査。実施主体は人事・経営層向けメディアへの広告出稿を売る事業者で、n=103と小さいので、比率は順位と方向の目安として読んでください)。

「費用対効果が見合っていないと感じる施策」の1位は展示会で42.7%。リスティング広告33.0%、ディスプレイ広告30.1%、SNS広告26.2%と続きます。

同じ調査で、2026年度の予算をどうするかを聞くと、「変わらない」48.5%、「やや増やす」32.0%、「大幅に増やす」2.9%。減らすと答えたのは1割強です。

見合っていないと感じている施策の1位と、実施している施策の1位は、おそらく同じものです。別の調査になりますが、ITコミュニケーションズが2025年12月9日に公表した調査(2025年10月3〜8日実施、BtoB企業のマーケティング・広報・販促企画担当者237名。リード獲得ツールを売る支援会社の自社調査で、母集団も設問も上のProFuture調査とは別なので、突き合わせは目安です)では、前年度に実施した施策の1位が展示会の52.3%で、効果が高かった施策としても展示会が49.1%で上位に入っています。

効いている。見合っていない。来年もやる。この3つが同時に成立しています。

矛盾に見えますが、していません。「効果が高かった」はリードが取れたかを聞いていて、「見合っていない」は費用に対してどうかを聞いている。そして予算は、どちらの答えとも別のところで決まっている。効果の数字は、止める判断の入力になっていないということです。

止まらないのは、「中止」が誰かの承認を取り消す行為だから

日本の会社で施策を始めるには、承認が要ります。起案した人がいて、通した人がいて、その上で判子を押した人がいる。

止めるときも、同じ人たちの前に出ることになります。ここが問題で、「中止します」は、その人たちが去年した判断を、今年になって否定する形になります。誰がその稟議を書くのか。書いた人は、承認した部長に何と言うのか。

数字が悪いことは、ここでは助けになりません。むしろ逆で、悪い数字を出せば出すほど「なぜ去年そう判断したのか」に話が向かい、起案者の面子の問題になる。だから現場は、数字が揃っていても稟議を書きません。合理的な判断だと思います。

私が入った現場で、止まった施策がどう止まったかを思い返すと、担当者の異動と予算年度の切れ目がほとんどで、数字を見て「止める」と決めたものはほぼ思い出せません。

つまり、止める判断はほとんど存在していないんです。あるのは「更新されなかった」だけ。展示会が毎年続くのは効果があるからではなく、前年の秋に翌年のブースを申し込む手続きが、更新の判断を経ないまま回っているからです。

逆に、目につかない施策は数字を見られる前に消える

もう一方で起きていることがあります。止まらない施策がある一方、あっさり止まる施策もある。

事例記事の取材。営業が使う説明資料の改訂。見込み客を育てるメールの、3年前に作ったまま誰も触っていない配信の見直し。

これらには予算表に行がありません。誰かの稼働として吸収されているので、その人が忙しくなった月に、静かに止まります。承認も稟議も要らない。もともと承認されていないからです。

止まるかどうかを決めているのは効果ではなく、「行があるかどうか」です。行がある施策は数字が悪くても続き、行がない施策は数字を見られる前に消える。予算表に載っているという事実そのものが、続ける根拠として機能しています。

たちが悪いのは、消えるほうの施策に、受注の一番手前で効いているものが混ざっていることです。事例が1本増えたことで初回商談の空気が変わった、という話は現場ではよく聞きますが、その事例制作に行は無い。翌年、目につく施策が残り、種を蒔いていた施策が消えます。

全施策に更新日を付け、その日に見る数字を始める前に1行書く

止める基準を決めようとすると、ここまで書いた構造にぶつかります。基準を作っても、基準に触れた施策を「中止」する稟議を誰も書かないからです。

なので、設計を変えます。止めるのではなく、期限を切る。

すべての施策に更新日を付けてください。展示会なら翌年の申込期限。広告なら四半期末。メール配信や事例制作のような行が無い施策にも、無理やり付けます。半年後の月末、でかまいません。

更新日が来たら、更新の起案がなければ終わり。これだけです。中止の稟議は要りません。何もしなければ止まる。誰の判断も否定しない。承認した部長は「期限が来て更新されなかった」という事実を受け取るだけで、去年の判断を問われない。

そして、更新日に何を見るかを、始める前に1行書いておきます。ここが肝で、始めた後に書くと、書く人は続けたい人なので、必ず続けられる数字を選びます。

見る数字は、受注にしないほうがいい。ファストマーケティングの「BtoBマーケティングに関する実態調査 2026」(2026年5月実施、BtoB企業でマーケティング・営業に関与する会社員432名。BtoBマーケティング支援を売る事業者の自社調査です)では、受注までの平均期間が3か月以上と答えた人が36.8%、SaaS事業者に限ると48.9%でした。四半期で更新を判断する施策に受注を求めると、判断日に受注はまだ存在しません。

代わりに見るのは2つの件数です。その施策から、次の工程が受け取った件数。そのうち、更新日までに一つ先へ動いた件数。ウェビナーなら、参加後に営業が会いたいと言った人数と、そのうち初回商談が入った数。事例制作なら、営業がその事例を商談で使った回数と、使った商談のうち次の工程へ進んだ数。

閾値は始める前に書きます。「更新日までに、次の工程へ進んだ件数が3件未満なら更新の起案をしない」。この1行があれば、更新日に会議は要りません。数字を見て、起案するか、しないか。

採らなかった案が1つあります。 全施策の費用対効果を算出して横に並べ、下位を落とす案です。理屈は通っていますが、これをやると会議は「どの施策の受注か」の按分の議論に戻ります。比率は決まらないし、決まっても、予算表の行は動きません。

更新日の設計は、施策を減らすためのものではありません。続ける施策に、続ける理由を毎回言わせるためのものです。理由を言えた施策は残る。言えなかった施策は、誰も傷つかない形で終わる。

止める判断は、たぶん今後も下されません。下されないことを前提に、止まる仕組みを先に置いておく。それだけの話です。

よくあるつまずき

  • 更新日を全施策に付けず、疑わしい施策だけに付ける。 特定の施策にだけ期限を切ると、それは「中止の予告」として読まれ、起案者の防衛が始まります。行のある施策も無い施策も、同じ日に同じ様式で更新する。全部に付けるから、誰の判断も否定しない設計になります
  • 更新日に見る数字を、始めた後に決める。 走り出した施策の担当者が選ぶ数字は、必ず達成できる数字です。開始前に書けない施策は、何を根拠に続けるかが最初から無い施策なので、そこで気づけたほうがいい
  • 更新の起案が出てきたことを、続ける根拠として扱う。 起案は「見ると決めた数字が閾値を超えた」ことの報告であって、熱意の表明ではありません。数字を書いていない起案は、更新日を過ぎた施策の延命なので、通さない

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