商談が進まない・受注が読めない

営業が作った競合比較表は、たいてい相手の社内で使われない

営業が作った競合比較表は、たいてい相手の社内で使われない

「競合比較表を作りたい」という相談は、たいてい商談が止まっているときに来ます。

作ります。きれいな表ができます。それでも案件は動きません。

原因は表の出来ではなく、その表が誰の手で、どの部屋で使われるかを決めていないことです。

買い手は、営業に会う前に比べ終えている

IDEATECHと北川裕康氏(デマジェン総研)の共同調査(2026年4月16日公表、調査期間2026年3月23〜26日、n=307。年間契約額または一括導入費300万円以上のB2B商材の購買に2名以上で関与した会社員・経営者が対象。調査PRを事業とする会社の企画なので、比率は桁感として読んでください)では、営業に接触する前に約9割が複数社をリストアップしています。最終比較に残るのは2〜3社が約7割。営業と本格的にやり取りが始まった時点で、購買プロセスは平均で約40%進んでいます。

同じ調査で、検討プロセスに生成AI・AI検索を使ったと答えた人は91.2%。用途の1位は比較で47.6%です。

つまり比較という作業は、こちらが呼ばれる前に一度終わっています。そこへ営業が比較表を持ち込むと、相手にとっては終わった宿題の再提出です。

落とされる理由と、選ばれる理由は、同じ表に載っていない

とはいえ、機能が関係ないわけではありません。ここが面白いところです。

同じ調査で、候補から外した理由の1位は「機能不足」39.1%(複数回答)。企業規模が合わない34.5%、似た企業の導入事例がない26.4%が続きます。

一方、IDEATECHとデマジェン総研の第2弾調査(2026年6月9日公表、調査期間5月25〜26日、有効回答330。年間契約額500万円以上のB2B業務ソフトウェア・SaaSまたはITインフラ・セキュリティ商材が対象。設問により母数が異なります)で「購買判断に影響しなかったもの」を聞くと、一般的な業界動向レポート49.5%に次いで、機能比較表が46.2%で2位に入ります。

矛盾していません。落とすときは機能を見る。選ぶときは機能で決めない。

比較表は、落とされないためには要る。選ばれるためには効かない。

では何で選ばれているか。第1弾で発注先を決めた人に限って「選ばれた理由」を聞くと(n=298、上位3つまで)、1位は「似た規模の会社の導入事例があった」44.3%でした。機能が明確40.3%、業界での実績29.5%が続きます。

1位は、比較表の外にあります。

表が効くのは、比べる場面ではなく、守る場面

第2弾で「判断材料として助かったコンテンツ」を聞くと、1位はROI計算シミュレーター55.4%、2位が自社業界・類似規模の成功事例46.5%、3位が社内説明用スライド26.8%。

並べると、共通点は内容ではありません。相手が自分で使えるかどうかです。

担当者の立場で考えると当たり前の話です。社内で「なぜこの会社なのか」と聞かれたとき、ベンダーのロゴが入って自社が全項目◯の表を根拠に出したら、議題は製品から本人の目利きに移ります。営業に言われた通りに持ってきただけではないか、と。詰められるのは製品ではなく本人です。

だから使われない。作りが悪いからではなく、使うと本人が損をするからです。

ちなみに全部◯の表は、作っているときがいちばん気持ちいいのですが、読む側は3秒で見抜きます。

出すなら、行を自社と他社ではなく、相手の要件にする

変えたのは行と列です。

列に自社・A社・B社を並べるのをやめました。行に、初回商談で相手が使った言葉のまま要件を置きます。「既存の販売管理と二重入力にならないこと」「情シスの承認が要らない範囲で始められること」。相手の社内で通じる語彙で書くのが要点で、こちらの機能名に翻訳した瞬間、相手はその行を会議で読み上げられなくなります。

列は「満たす/条件付きで満たす/満たさない」の3つだけにします。

価値が出るのは「条件付き」の欄です。何をすれば満たせるのか、その条件を実装の言葉で書く。ここは生成AIにも競合のサイトにも書けません。実際に入れた人しか知らないからです。相手はこの欄を、社内の反対意見への答えとしてそのまま使えます。

そして「満たさない」を空欄にしない。1つか2つ、はっきり書く。この欄が埋まっている表だけが、相手の手元で相手の資料になります。

途中でやめた案が2つあります。

競合名を伏せてA社B社と書く匿名の表。角が立たない代わりに、社内で使う段になって「A社って結局どこですか」で止まります。使えない資料は、丁寧でも資料ではありません。

初回商談で渡す案もやめました。この段階で表を出すと、こちらから土俵を機能の数に設定することになります。落とされる理由の1位が機能不足39.1%である土俵に、自分から乗る必要はありません。渡すのは最終候補に残ったと分かってからで間に合います。

顧客の社内工程まで含めて設計を組み直す考え方は、レベニューアーキテクチャとはに置いています。

競合比較表は、買い手が比べるための道具ではなく、買い手が社内で自分の選択を守るための道具です。

今週、直近で出した比較表を1枚だけ開いてください。「満たさない」に何か書いてあるか。全部が◯なら、その表はまだ相手の社内に持ち込まれていません。

関連する記事

行に置く要件は、初回商談で取ります。聞く順序は初回商談で「課題は何ですか」から始めるのをやめましたに書きました。比較表は、その答えを1枚に戻したものです。

同じ悩みの記事は「商談が進まない・受注が読めない」にまとめています。