CRM・SFAが定着しない

HubSpotとSalesforceのどちらを勧めるかは、3つの前提で決まります

HubSpotとSalesforceのどちらを勧めるかは、3つの前提で決まります

「HubSpotとSalesforce、どちらがいいですか」と聞かれたとき、私は製品の話から始めません。

決まるのは、次の3つを先に決めたときだけです。入力するのは誰か。どのデータをこのツールで正とするか。運用を誰が続けるか。

この3つが埋まっていれば、選定は比較表ではなく消去法で終わります。埋まっていないなら、どれを選んでも同じ場所で止まります。

比較表で選ぶと、機能が多いほうが勝ちます

機能一覧を横に並べると、丸の多い製品が良く見えます。ところが導入後に効くのは、丸の数ではなく、使わない機能を毎日どれだけ見せられるかです。

マツリカの調査(2025年1月公表、調査実施は2024年11月25〜28日、n=101。SFAを提供するベンダーによる自社調査で、対象はB2B企業の営業部門管理職・主任)では、活用促進のために求める機能の1位は「入力自動化・項目簡略化」で47.5%でした。現場が欲しいのは機能の追加ではなく、画面を減らすことです。

比較表は、この向きと逆に働きます。だから先に前提を固めます。

前提1|入力するのは誰か

営業本人が入力するのか、インサイドセールスや営業事務が代行するのかで、選ぶべきものが変わります。

営業本人が外出先から入力するなら、1件を素早く更新できることが最優先になります。事務が代行するなら、一覧画面で複数件をまとめて更新できるかが効きます。この2つは同じツールの中でも得意不得意が分かれます。

同じマツリカ調査では、営業が入力しない理由の1位は「入力作業に時間がかかるから」54.5%、5位は「入力すべき項目が多いから」28.7%でした。入力者が誰かを決めずに項目を設計すると、この2つが必ず後から出てきます。

前提2|どのデータを、このツールで正とするか

多くの会社には、すでに基幹システムやkintone、Excelの台帳があります。CRMを足すとき、顧客名と担当者と契約の情報が、どちらにも入る状態になります。

決めるのは1つです。顧客マスタの正はどこか。正を決めたら、そこから片方向で流します。両方で編集できる往復同期は、最後まで手を出さないでください。片方向なら不整合は「反映が遅れた」で済みますが、往復同期の不整合は「どちらが正しいか誰も分からない」になります。

この判断を先送りしたまま導入すると、半年後に両方のシステムに違う会社名が入り、統合の作業が発生します。ツールの相性ではなく、決めなかったことの費用です。

前提3|運用を誰が続けるか

導入した後、項目を足したりレポートを直したりする人が要ります。ここが日本で最も薄い層です。

IPAの『DX白書2023』(2023年2月公表、日米企業アンケートは2022年6〜7月実施、有効回答は日本543社・米国386社)では、DXを推進する人材が「充足している」と答えた日本企業は10.9%、米国企業は73.4%でした。専任がいる前提で設計すると、日本ではまず外れます。

専任がいないなら、設定変更に開発を伴うツールは避けてください。半年で誰も触らなくなり、初期設定のまま固まります。逆に、外部パートナーの運用予算が確保できているなら、この制約は外れます。

3つが決まった後の分け方

ここまで決まっていれば、私の勧め方は次のように分かれます。

HubSpot を勧めるのは、営業本人が入力し、マーケティングと同じ画面で見たい場合です。専任の管理者がいない組織でも、設定変更が管理画面で完結します。

Salesforce を勧めるのは、海外本社がすでにSalesforceを使っていて、日本法人だけ別ツールにすると本社のレポートが分断される場合です。権限や製品構成、見積の条件が複雑な事業でも、こちらに寄ります。ただし運用を担う人か、パートナーの予算が要ります。

kintone が合うのは、顧客管理よりも申請や案件台帳のような業務アプリが主で、現場が自分で画面を作りたい場合です。

日本で公開された独立系のCRMシェア調査は見当たりません。参考になるのはTSUIDEの調査(2022年2月公表、n=14,035)で、導入企業の内訳はSalesforce 48.4%、kintone 19.9%、HubSpot 10.2%でした。ただし個人パネル調査であり、同調査のSFA・CRM導入率9.1%は実態より低く出ている疑いがあります。順位の目安として読む以上の使い方はできません。

そもそも、6割は選定以前の段階にあります

HubSpot Japanの調査(2026年2月27日公表、マクロミル委託の自社調査、売り手n=1,545、従業員51〜5,000名)では、CRMの導入率は38.1%で、2022年から大きな変化がありませんでした。クラウド型に限れば2割半ばです。

つまり多くの会社にとって、いま起きている問題は製品の優劣ではありません。誰が見込み客を追うのか、どの条件で営業へ渡すのか、失注の情報を誰がどこに残すのか。この3つが決まっていない状態でツールだけを入れ替えると、ExcelがCRMに置き換わるだけで、進め方は何も変わりません。

ツールは、3つの前提が決まった後なら消去法で決まります。決まっていないなら、どれを選んでも同じ結果になります。

今週やることを1つ。入力者・正とするデータ・運用の担い手を、1枚の紙に書いてください。3つのうち1つでも空欄なら、選定は止めて、そこを先に埋めます。比較表を1枚増やすより、この3行のほうが早く決まります。

収益の構造としてどこに何を残すかはレベニューアーキテクチャとはにまとめています。

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