CRM・SFAが定着しない
移行テストは通ったのに、リハーサルで人が詰まった
移行テストでは、決めた項目が全部正しく移っていました。自動化も動いていました。それでも本番の1週間前にリハーサルをやったら、ログインできない担当者が3人出ました。
原因は権限グループの設計です。旧システムの役職と権限を1対1で対応づけていたのに、実際の現場では兼務や異動があり、役職と権限がすでにずれていました。テストが見ていたのは「データが正しく移ったか」。リハーサルが見ていたのは「その人が、その日から仕事を始められるか」。同じ移行プロジェクトの中に、別の質問を持つ工程が2つあります。
テストとリハーサルは、同じものを2回やっているわけではない
移行テストは、開発者かベンダーが、決めたシナリオで確認します。この項目は移った。この自動化は動いた。この画面は表示された。確認しているのは「仕様通りに動くか」です。仕様通りに動くことは必要条件ですが、十分条件ではありません。
リハーサルは、実際に使う人が、実際の権限で、実際の業務の手順でシステムに触れる工程です。ここで初めて、テストのシナリオに入っていなかった動きが出ます。兼務で複数の権限グループに属している人。異動でメールアドレスが変わった人。旧システムでは1つの画面で完結していた作業が、新システムでは2つの画面をまたぐことに、本人がまだ気づいていない場面。
テストは仕組みを見ています。リハーサルは人を見ています。仕組みが正しくても、人がその仕組みで最初の1日を過ごせるかは別の話です。テストが通っているのに現場が止まる。よくある話です。
サンドボックスでは、この差が消えない
「テスト環境で連携も含めて確認したから大丈夫」と思いたくなりますが、そこにも落とし穴があります。
HubSpotの公式ドキュメント(2026年7月27日更新)は、サンドボックス環境の制約をはっきり書いています。本番で使っている外部連携は、サンドボックスに自動では接続されません。加えて、レコードのIDは環境ごとに変わるため、サンドボックス内で連携先とのやり取りを追いたい場合は、別に「External record ID」のような項目を用意する必要があると案内されています。
つまり、テスト環境で「連携は動いた」と確認できても、それは本番の連携先と実際に話した結果ではありません。本番の外部連携、本番の権限、本番のメールサーバー。この3つが揃った状態で一度動かしてみないと、テストが見ていない不具合はそのまま本番に持ち込まれます。
1週間前という距離が、直せる時間と環境のずれの両方を決める
リハーサルを1週間前にやるのは、この距離が2つの条件を同時に満たすからです。
まず、見つかった不具合を直す時間が残っています。権限グループを1つ直す、通知の宛先を直す。この程度の修正は数日でできます。1週間あれば、直してもう一度確認する時間まで取れます。
同時に、本番と環境がずれるほど長くはありません。1ヶ月前にリハーサルをやると、その後の1ヶ月で人事異動があり、権限の割り当てが変わり、旧システムのデータも動きます。せっかく見つけた不具合が、本番までにまた別の形に変わっています。リハーサルは、本番に一番近い状態で、本番の前に一度だけ失敗しておく工程です。近すぎれば直す時間がなく、遠すぎれば見ているものが本番と違う。1週間は、その両方を満たす、最後の窓です。
リハーサルで確認するのは、動くかどうかではない
だから、リハーサルのチェックリストは、移行テストのチェックリストを再利用するだけでは足りません。移行テストが見るのは「データは正しいか」「自動化は動くか」。リハーサルで見るのは、それとは別のことです。
代表的な権限パターンを持つ担当者が、実際にログインできるか。旧システムでは1つの作業だったものが、新システムでは何画面に増えたか。外部連携は、テスト環境ではなく本番の接続先と、実際にデータをやり取りできるか。
この3点は、仕様書のレビューでは出てきません。人がシステムの前に座って、初めて出てきます。
移行の設計そのものを見直す話は、CRM移行で「全部の項目を移したい」と言われたらに書きました。そこで決めた設計が、実際に人の手で動くかどうかを確認する工程がリハーサルです。
移行テストが確認するのは、仕組みが仕様通りに動くかどうか。リハーサルが確認するのは、人がその仕組みで最初の1日を過ごせるかどうかです。本番の1週間前という距離は、見つかった不具合を直す時間と、本番との環境のずれを抑える時間の両方を満たす窓になります。
今週、リハーサルの参加者リストを見てください。開発チームと管理者だけで組んでいたら、それは移行テストの再演です。代表的な権限パターンを持つ現場の担当者を、最低1人は入れてください。
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