数字が部署ごとに合わない
どの施策の受注かを30分議論しても、来月の予算は変わらない
月次のマーケティング会議。1件の受注をめぐって、30分が溶けます。
展示会で名刺を取った案件です。その後ウェビナーに2回参加していて、でも決め手は紹介だったらしい。さて、貢献をどこに置きましょうか。
結論は出ません。仮に出たとしても、翌月の予算配分は1円も変わらない。
そして翌月、また同じ議論をします。按分の精度を上げようとしている限り、この会議は毎回まったく同じ場所で止まります。
按分が決まらないのは、決め手が記録の残らない場所にあるから
受注を作った接点を1つに特定できる。この前提が、日本のB2B購買ではそもそも成り立ちません。
IDEATECHがデマジェン総研の北川裕康氏と実施した第2弾の大型購買プロセス調査(調査2026年5月25〜26日、公表6月9日、有効回答330。年間契約金額500万円以上のソフトウェア・SaaS導入に2名以上で関与した人が対象)では、意思決定に関与した人数は7名以上が58.5%でした(n=325)。関与した専門部門は情報システム42.2%、経理・財務38.2%、セキュリティ37.2%、法務33.2%と続きます。調査PRを事業とする会社のパネル調査なので、比率そのものより桁感として読んでください。
7名が別々の情報源から検討に入って、そのうちCRMに接点が残るのは、たいてい商談の窓口になった1人だけ。残りの6名がどこで何を読んだかは、どこにも残っていません。
按分しようとしている対象の大半が、そもそも観測できていないわけです。
同じ調査では、検討が長期化したと答えた人が73.5%(大幅13.2%+やや60.3%)、長期化の原因の1位は「経営層の判断待ち」63.6%でした(n=239)。半年かかった案件で最後に効いたのは、途中に挟まったウェビナーではありません。決裁者が判断するまでの待ち時間です。
待ち時間は、どの施策にも按分できません。
比率を動かして、来月の予算配分が変わるか
按分の話が始まったら、一度これを聞いてみてください。「展示会の貢献を40%から60%に上げたら、来期の出展費を増やしますか」
だいたい、増やしません。出展するかどうかは、按分の小数点ではなく、その展示会で誰に会えたかで決まっているからです。
ProFutureがマクロミルに委託した2026年度のB2Bマーケティング予算・施策調査(調査2026年2月3〜4日、公表3月4日、有効回答103)では、今後重視したい指標の1位は「ターゲット層の濃さ」43.7%で、リード獲得単価(CPA)35.9%を上回りました。同じ調査で、投資対効果が見合っていないと感じる施策の1位は展示会42.7%です。n=103と小さく、実施主体が自社メディアへの広告出稿を売る事業者である点は割り引く必要がありますが、順位の向きは実務の感覚と合います。
判断に必要な粗さは、思っているよりずっと粗い。
海外の数字ですが、EbstaとPavilionの2025年GTMベンチマーク(n=655,000商談、387社)は、チャネル別の効率(勝率×単価÷営業サイクルを平均1.0で指数化)を紹介1.3倍、自然流入1.2倍、アウトバウンド1.05倍、イベント0.78倍、広告0.68倍と出しています。この粒度で並べば、どこを増やしてどこを削るかは決まります。1件ごとの按分は、要りません。
「按分が決まらない」の中身が、引き渡しの不満であることがある
按分の議論が長引く会議には、たいてい別の話が混ざっています。
ソフトブレーンがIDEATECHと実施した部門間連携の調査(調査2024年10月4〜6日、公表12月17日、営業n=159・マーケn=139の計298)では、営業からマーケティングへの不満の1位は「リードの情報が不十分」42.1%、マーケティングから営業への不満の1位は「フォローアップの改善を行っていない」47.5%でした。双方に同じテーマで聞いた対称設計です。お互いが、相手の工程を問題だと思っている。
この状態で貢献度の話を始めると、比率の議論の形をした責任の押し付け合いになります。数字の設計では解けません。会議を分けたほうが早いです。
按分をやめて、線がつながっているかだけ見る
やることは3つ。どれも今日決められます。
- 流入経路は最初の1つだけを、担当者が書き換えられない形で残す。 後から上書きできる項目に入れた瞬間、集計は毎月変わります
- 商談に「この案件を作った施策」を1つだけ持たせる。 複数選択にしないこと。選べるようにすると全部が選ばれ、合計が母数を超えます
- 受注時に営業へ1問だけ聞く。「最初に検討候補に入ったきっかけは何でしたか」。 CRMに残らない6人分の情報が、ここでだけ拾えます
この3つが動けば、「先月のセミナー経由で3件受注」と言えるようになります。投資判断は、その一文で足ります。按分モデルを選び直すより、こちらのほうが早いし、効きます。
接点への貢献度の按分は、日本のB2B購買では決まらないし、決まっても打ち手が変わりません。決めるべきは比率ではなく、施策と受注が1本の線でつながっているかどうかです。
よくあるつまずき
- 多接点の按分モデルを先に選ぶ。 線がつながっていない状態でモデルを載せても、按分するデータがありません。順序は接続が先です
- 「正確に測れないなら測らない」で止める。 粗い接続でも、施策を止める判断はできます。止められないまま続けるほうが、よほど高くつきます
- 按分の議論を、営業とマーケの合意形成の場に使う。 数字は合意の道具になりません。引き渡しの基準を別の場で決めてください
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