CRM・SFAが定着しない

パイプラインを部署ごとに分けた結果、全社の予測が作れなくなった

パイプラインを部署ごとに分けた結果、全社の予測が作れなくなった

「うちの部署の商談が埋もれるので、パイプラインを分けてほしい」

この要望は、たいてい通ります。分けた直後の評判も良い。壊れるのは四半期末で、全社の予測を出そうとした瞬間です。ステージ名が部署ごとに違うため、足し算ができません。

分ける基準は組織図ではありません。ステージの意味が違うかどうかです。

分けたくなる理由は、たいてい見せ方の問題

「自分の部署の商談が見つけにくい」「他部署の案件が混ざって邪魔」。ここから出る要望は、パイプラインの構造ではなく画面の問題です。

背景にあるのは、部署をまたぐと数字が合わなくなるという実感のほうです。HubSpot Japanの調査(2024年2月19日公表、n=1,545、マクロミルに委託した同社の自社調査。対象は従業員51〜5,000名の企業)では、営業組織の79%がデータ活用で何らかの困りごとを抱えており、「他部署とのデータ連携が進んでいない」が24.4%、「営業部署内のデータが適切に管理されていない」が28.1%でした。

ソフトブレーンの調査(調査2024年10月4〜6日、公表2024年12月17日、IDEATECHが実施、営業159名・マーケティング139名の計298名)では、部門間の情報連携が「満足にできていない」と答えた割合は営業29.5%、マーケティング37.4%です。同じテーマを双方に聞いた対称設計で、マーケ側の不満が約8ポイント高く出ています。

つまり、連携が悪いという体感は先にあります。そこにパイプラインを分ける提案が来ると、通ってしまいます。分ければ連携はさらに切れるのに、判断の材料が「見やすさ」しかないからです。

分けてよい唯一の基準

パイプラインを分けるかどうかは、次の一問で決めます。

同じステージ名が、部署によって違う条件を指しているか。

たとえば「提案」というステージが、既存顧客向けの部署では見積提示、新規向けの部署では初回の課題共有を指しているなら、分けます。同じ言葉が違う条件を指したまま1本にすると、ステージ別の滞留日数も転換率も意味を失います。

逆に、扱う商材も金額も違うが、商談が次に進む条件は同じ、という場合は分けません。この違いは項目で持つべきものです。

判断を早くするには、部署ごとにステージの通過条件を1文で書かせてください。「誰が何をしたら次に進むか」です。書いた文が同じなら1本、違うなら別パイプラインです。会議で議論するより速く、後から誰でも再現できます。

分けずに解けること

見せ方の要望は、パイプラインを増やさずに解決できます。順に試してください。

  1. 担当者・部署・商材でフィルタしたビューを、部署ごとに保存する。 「自分の商談だけ見たい」という要望は、ほとんどここで終わります
  2. 項目を1つ足す。 事業部、チャネル、商材区分。分析はこの項目で切ります。パイプラインを増やすと切り口が固定されますが、項目なら後から組み替えられます
  3. ダッシュボードを部署別に分ける。 データは1本、画面は複数。この形が最も壊れにくい構成です

パイプラインは「商談の進み方」の定義であり、「誰の商談か」の分類ではありません。分類は項目の仕事です。

分けるなら、先に決める3つ

ステージの意味が本当に違い、分けると決めた場合は、作る前に3点を確定させます。後から決めようとすると、数字を作り直すことになります。

1. 全社で共通にするステージを決める。 全ステージを揃える必要はありません。「受注」「失注」と、予測に使う1〜2ステージだけ定義を共通にします。ここが揃っていれば、パイプラインが5本あっても全社の予測は組めます。

2. 失注理由の選択肢を共通にする。 部署ごとに選択肢を作らせると、全社で失注理由を比べられなくなります。比べられない失注理由は、集めても打ち手になりません。

3. パイプラインをまたぐ案件の扱いを決める。 別部署に引き継ぐとき、商談を移すのか、新規に作るのか。移す運用なら、ステージの対応表を先に書きます。新規に作る運用なら、受注金額が二重に計上されない仕組みが要ります。ここを決めずに運用した組織では、四半期の受注額が実績より膨らみます。

パイプラインは組織図ではなく、商談の進み方を写したものにする。

いま複数のパイプラインを持っているなら、各パイプラインのステージ名を並べて書き出してみてください。同じ名前で違う条件を指している箇所と、違う名前で同じ条件を指している箇所が出てきます。後者はその日のうちに統合できます。

収益の設計は、部署ごとの最適化を足しても出てきません。全体を1つの流れとして設計する考え方はレベニューアーキテクチャとはにまとめています。

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