数字が部署ごとに合わない

商談化率が部署ごとに違うのは、母数の定義がずれているから

商談化率が部署ごとに違うのは、母数の定義がずれているから

商談化率が会議のたびに違う数字になるのは、ツールの不具合でも担当者の入力ミスでもありません。分子と分母、とくに母数である「リード」の定義が部署ごとにずれているからです。

転換率を測り始める前に、何を・いつ時点で数えるかの定義を1枚に揃える。順序はここからです。

なぜ同じ「商談化率」が毎月違う数字になるのか

同じ指標が会議ごとに動くとき、疑うべきは数え方であって、現場の努力量ではありません。

商談化率は「商談数 ÷ リード数」という単純な割り算です。ところが、この分母の「リード」が部署ごとに別物を指していることが珍しくありません。

マーケティング部門は資料をダウンロードした全件をリードと数え、インサイドセールスは電話がつながった件だけをリードと数え、営業は予算と決裁者が見えた件しかリードと認めない。

三者が別の分母で同じ「商談化率」を計算すれば、数字が一致しないのは当然です。

HubSpot Japanが2024年に実施した調査(調査委託先はマクロミル、売り手側の回答者数1,545、従業員51〜5,000名の企業。CRMを提供するHubSpotの自社調査である点は割り引いて読む必要があります)では、79%の企業が「データ活用で何らかの困りごとがある」と回答し、そのうち「営業部署内のデータが適切に管理されていない」が28.1%、「他部署とのデータ連携が進んでいない」が24.4%を占めました。数字が合わない状態は、例外ではなく既定値です。

転換率の前に、母数の定義を1枚に揃える

先にやるべきは、集計の自動化ではなく、定義を1枚の図にそろえることです。

有効なのは、リードから受注までの流れを横に並べた1枚の図を作り、各段の「入る条件」を言葉で書き切ることです。

マーケティングが渡す段(属性と行動の閾値をセットで決める)、インサイドセールスが引き継ぐ段(担当者が変わっても同じ判断ができる行動ベースの記述にする)、案件として登録する段(予算・決裁者・課題・導入時期の4条件がそろった状態と定義する)。

この1枚があると、「あの案件は今どこにあるか」という問いに、マーケティングも営業も同じ図を見て答えられます。会議の議論が、感覚のぶつけ合いから位置の確認に変わります。

段の定義を精密にすると、転換率も分解できるようになります。

レベニューアーキテクチャの原典であるWinning by Designの標準文書「The Bowtie: A Proposed Standard」(v1.0、ベンチマークの対象期間は2016〜2022年、n=868)は、従来ひとまとめにされてきたマーケティング獲得から案件化までの転換率を、複数の段階に分けて定義しています。

同文書では、いわゆるMQLからSQLへの転換は連続する2つの転換率の積、案件化から受注までは別の2つの積として整理されます。

ひとつの大きな転換率を追うより、どの段でこぼれているかが見えるようになります。分解できるのは、各段の定義が先に揃っているからです。

「いつ時点の数字か」を必ず決める

母数がそろっても、基準日が人によって違えば数字はまた動きます。

同じ「6月の商談化率」でも、6月に発生したリードを分母にするのか、6月に商談化した案件の元リードをさかのぼって分母にするのかで、値はまったく変わります。前者は当月コホート、後者は成約起点の逆算です。

どちらが正しいということではなく、どちらかに決めて全部署でそろえることが正しい。

計測を始める前に「いつ時点の、どの母集団の数字か」を1行で書いて固定してください。ここを決めずに走り出すと、後から数字の意味が説明できなくなります。

この母数と時点の設計は、レベニューアーキテクチャで収益全体を一続きに測るときの土台になります。

日本には転換率の公開ベンチマークがない

外の基準がない以上、自社の数字を内部で一貫させることが、唯一よりどころになる基準です。

海外にはEbstaとPavilionの「2024 B2B Sales Benchmarks」(n=420万商談、海外企業対象)のように、大規模な商談ベンチマークがあります。

一方で、日本のリードから商談化、商談から受注までの転換率について、母数と手法を開示した公開ベンチマークは見当たりません。つまり日本企業には「自社の45%は高いのか低いのか」を照らす外部の物差しがありません。

だからこそ、まず自社の定義と基準日をそろえ、時系列で自社を自社と比べられる状態を作ることが先決です。他社比較ができないという事実は、内部の一貫性の価値をむしろ高めます。

よくあるつまずき

  • 定義を決める前にダッシュボードを作り込む。 母数の定義がずれたまま自動集計を組むと、きれいなグラフが間違った数字を毎日生産します。図を1枚そろえる方が先です
  • 「リード」を一語で片づける。 購買意欲が高い人、では運用できません。属性の条件と行動の条件をセットにして、担当者が変わっても同じ判定ができる言葉にします
  • 基準日を決めずに月次比較を始める。 当月発生ベースと成約逆算ベースが月によって混ざると、増減が施策の成果なのか数え方の揺れなのか、誰にも説明できなくなります

転換率は母数の定義で決まります。だから測定を始める前に、何を・いつ時点で数えるかの定義を部署間で1枚に揃えます。

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「リード数」そのものが部署ごとに別の意味で使われている場合は、部署ごとに「リード数」が合わないときの、定義の揃え方から先に読んでください。

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