CRM・SFAが定着しない
名刺とExcelを取り込む前に、必ず決める3つのこと
名刺の束と、部署ごとのExcelをCRMに取り込む。作業自体は半日で終わります。
壊れるのはその後です。重複と上書きは取り込んだ瞬間には見えず、数週間後にレポートとメール配信で表に出ます。
順番を変えてください。ファイルを整える前に、決めておくことが3つあります。
取り込む対象は、たいてい台帳ではない
HubSpot Japanの調査(2026年2月27日公表、n=1,545、マクロミルに委託した同社の自社調査)では、売り手全体のCRM導入率は38.1%、クラウド型は2割半ばで、いずれも2022年から大きく動いていません。
残りの6割では、顧客情報は名刺、営業個人のExcel、展示会の来場者リストに分かれたまま置かれています。
同社の2024年調査(n=1,545、同じくマクロミル委託)では、営業組織の79%がデータ活用で何らかの困りごとを抱えており、「営業部署内のデータが適切に管理されていない」が28.1%でした。
取り込むのは整った台帳ではなく、別々の目的で、別々の人が集めた紙とファイルです。
1. 何をもって同一と判定するか
会社名で突合しないでください。
日本の会社名は、同じ企業が「株式会社◯◯」「(株)◯◯」「◯◯株式会社」「◯◯」と4通りで入ります。全角と半角、スペースの有無、旧社名、事業所名まで混ざります。会社名を突合キーにすると、1社が5レコードに割れるか、逆に別会社が1つに潰れます。
人はメールアドレス、会社はドメインで判定します。
メールアドレスがない名刺は、それだけで別扱いにします。ここで「たぶん同じ人だから」と手で寄せると、後から誰も再現できない統合が残ります。判定できないレコードは自動で統合せず、確認タスクとして残してください。
日本企業のCRMにおける重複データ率の公開調査は、現時点で存在しません。海外の数字を当てはめる意味もありません。取り込む前に自社のファイルで重複率を数えれば、それが唯一の実測値になります。
2. どちらの値を勝たせるか
同じ人のレコードが既にある場合、新しいファイルで上書きするか、既存を残すか。ここを決めずに取り込むと、CRM側で更新されていた役職や部署が、2年前の名刺の内容に戻ります。
判断の基準は単純です。商談や活動の履歴が付いているレコードを主にします。履歴は取り戻せませんが、役職は聞き直せます。
項目ごとの例外も要ります。メールアドレスと電話番号は新しい方、担当営業と初回接点は既存優先、といった一覧を先に作ってから取り込みます。
3. どこから来たデータか
取り込むファイルには列を足します。取得経路、取得日、取り込んだ担当者、同意の状態の4つです。
理由は配信にあります。名刺などの書面で本人からメールアドレスの通知を受けた相手は、広告宣伝メールのオプトイン規制の例外に当たります(特定電子メール法第3条第1項第2号、総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」)。一方、購入したリストや第三者から受け取ったリストは、この例外に当たりません。
取り込んだ後では、この2つは同じ「連絡先」に見えます。区別できるのは、取得経路を列として持っていた場合だけです。「同意の状態が不明なリストは自動配信の対象にしない」という判定も、列がなければ書けません。
まず手元のファイルを1つ開いて、メールアドレスが空欄の行が何%あるかを数えてください。その1つの数字が、3つの判断にどれだけ時間をかけるべきかを教えてくれます。
顧客データは、集めた量ではなく、後から説明できるかで価値が決まります。この考え方の全体像はレベニューアーキテクチャとはにまとめています。
取り込む前に「何をもって同一と判定するか」「どちらの値を勝たせるか」「どこから来たデータか」の3つを決めます。入れてから決めようとしても、もう直せません。
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